花蜜
幼い頃、幼稚園のまわりを一人で歩いていると、一隅に、甘い蜜を持つ花を見つけた。薄暗い葉叢の影を縫うようにして、やわらかで冷ややかな日の光が、白い肌を幾重にも照らしていた。花弁のひとつを摘み取って、そっと蜜を啜る。妖精のデザートとでもいうべき素朴で自然な甘さが、ほんのりしずかにひろがった。
まもなく、なにかちいさなものが口のなかに迷い込んできた。何とはなしに噛み潰してみると、じゃりりとした感触がして、妙な酸っぱさが舌を刺激する。恐る恐る口から取り出してみると、潰された一匹の蟻が、涎にまみれて溶解されかけていた。