洞
人跡のつかない地の底、はるか深くにそれはあった。
きのこのような形貌をしているが、清らかな白い羽毛に覆われ、幾枚もの鳥の翼が、おおきくその笠を成していた。けれども、狭い洞のなかにあって、かつて一度も、その翼で羽搏いたことはなかった。
その時ついに、翼を力強く羽撃かせてみせた。しかし、幽かに土埃が蹴立てられるばかりだった。
帰するところ、それだけのことなのだ。
その時を越えても、何も変わりはしなかった。
私は何時からか、ひとつの点として、際限もなく続く一本の直線の上を歩いていた。
景色が一向に変わらないので、ほんとうに自分が前に進んでいるのかどうか、確信が持てなかった。
唯一つ、巨きなザトウクジラの眼玉だけが、直線の果てに浮かび上がり、万物を見透かすような眼差しで、私を永遠に監視していた。