ディプロカウルス

ディプロカウルスの頭骨はブーメランになるらしい。
ぼくはディプロカウルスを古生代石炭紀後期の北米から呼び寄せるべく、早速チベッタンホルンをネットで購入した。

ホルンが届いたその夜、人通りの少なくなった時間帯を見計らい、ぼくは近所の公園へ急いだ。そのあたりの小枝で、砂場に魔法陣を描く。そして、その中央に生贄を捧げる。この生贄とディプロカウルスが入れ替わり、それぞれの時代へ召喚される仕組みだ。

生贄には、もけちまるの頬袋を使う。
なにも、もけちまるから無理やりもぎ取ったのではない。
自然に落っこちたのだ。

ぼくは周囲を見回し、誰もいないのを確かめてから、特大のホルンに息を吹き込んだ。地を揺るがすような低音が、夜闇の公園に響き渡る。静まり返った木々がざわめき、並木の葉の一枚一枚が微かに揺れた。砂場の砂は、まるでぼくの高揚感と共鳴するかのように、わずかに振動し始めた。

ついに魔法陣の文様がピンク色に発光し始めた、その瞬間。
ほんの一瞬の出来事だった。
突如、公園の外灯の明かりをまとったミミゲモモンガが、並木から滑空し、魔法陣の中央へと舞い降りた。
もけちまるの頬袋をかっさらおうとしたのだろう。
小さな両手で頬袋をつかんだ、その刹那―― ミミゲモモンガは頬袋とともに消失した。

静寂が広がる間もなく、砂場の闇が揺らぎ、ぬるりとディプロカウルスが姿を現した。 砂を全身にまとい、のたうち回るその皮膚は、外灯の光を受けて艶めいていた。

一方その頃、ミミゲモモンガは石炭紀の北米で、なにも知らず、もけちまるの頬袋を満足げに頬張っていた。