2026年1月句集
願えば遠い星のちいさな瞬き
月と星と、間をとりもって歩く
かぎりあるさみしさの空はいつまで
鴎が降り立った頃の音楽
もう別れることの太陽をみんなで眺める
くちなし赤い顔みせて山に別れる
はや何年の風に吹かれて蔓梅擬
なにやら落ちているかりんの夕日をすくい上げる
食べられるだけ食べて狼の円い月
ひとりの吐息が夜の風鳴り
いずれ踏まれる命といわれて芋虫は這う
帰り来て迎え入るわたしの風
向かうは別れの街明かりが流れ始めた
その紙切れは懐にある満月
これがわたしで東雲を食むことも
白い土に揺れる葉陰を見ることも
雀が虫をとらえて葉陰の向こう
ここまで冬日は差し込んで畳のささくれ
いつかの落書きがほこりの底へ沈む本棚
ふたたびひとつの影となって歩いている
ひとりの風になりきって寒空
寒風にかたぶいて川のほうへ
冬空ひとすじの道となり日が遠のく
啄みの跡だけ残って枯れ枝ばかり
過ぎゆけるまぶしいばかりの柚子の色さえ
鵯みあげて日影の紅きを憶え
道に落ちているままの笑顔だ
八手の花に翳しているわたくしで
若くして若きに逝かれ粉雪や
夢の霙みぬちに残り粉雪へ
冬空やもうすこしだけ歩こうか
紅い葉へ寄せるこころに色はなく
さめゆく夢のいるか程なくひかり散る
逢うて別れて梅の花
愚かさを風に放てば水仙ゆれる
水仙へし折れている小春日
踏まれてもへし折れても水仙の花
八手花たおれてもなお咲きつづく
裏切られて雲ひとつない青空で
裏切られ空の青さを踏みしめる
わたしのわたしであることの泪はながれ
夜の風を受くこともある梢かな
夜風や埃のひとつ沈みけり
眼裏の朝焼けの空へ往く
死んでしまえば葉の紅く生い茂る
挨拶返せず朧なる影を見る
川よ、いっぱいのひかりを授ける
枯れ尽くしてより映ゆる空の青さの
たんぽぽ、たんぽぽ、欠けている
堤の芥にも夕の日
冥闇をそっと私の真ん中に置く
つるりと剥いでしまった夜の白い肌
柱のうえ鴉の啼いて届かぬ日
枯れ花ばかり顔をあわせる
閉園のしずかな太陽を風におさめる
口あけたきり黙している昼の月
雀のひとりごと遮ったままの沈黙
落ち着いて散れそうな桜咲く
取るに足らないことだと言ってたんぽぽ
薄い月を仰ぎ見る薄い心で