2024年度句集

落ち葉ふみゆく(あしうら)のやわらかさよ

薄氷かち割る、宇宙のしじま

こほりのみずであらふ

砂浜の足跡ばかり聴いてゐる

水音しんと横たえて昼なお暗く

人去りて水音

(ほとばし)る水 青鷺動かぬ

包丁あらへば光しほたる

梢しらじらつらぬく青天

はばたくや草薫る

日影もふっとさらわれて風吹く

埃しんとし風鳴る

寒風煤曳く

空の一人に透明なかぜふく

枯れ草と風をきいてゐる

昼の月ほほえみゐたり花ひらく

知らない道の花と居る

落陽、工場吹き抜けるジャズ

茜空ぽつねんと地球まっすぐに

かれがれと川の向かふに日が落つる

暗雲(ひしめ)く竹藪しづか

ただ青い空の、墓参り

夜の青ビロード滲む月影

リスら星屑抱へきたりし雪の跡

冴えかえるまどかなる月の夜

なにもない月輪がある

夜風、(そば)の木々にも私にも

赤信号、闇も待ってゐる

なかなか晴れない一人に星降る

星屑 塵屑 夜の(はて)

鏡の向かふの瞳を見てゐる

指先さまよふ薄明り

ふとこころぼそく、蟻のあしなみ

ちいさな生傷かがやく

サンドウィッチ、薄日しみこむ

(すべ)る影ひとすじの帰り道

なにもわからぬ影の泣いてゐる

のぼる影を見てゐる私がのぼる

淋しい光に影ひとつ置く

わからない、まっすぐ歩く

みな棄ててひかりにただ居る